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五感で感じること

2015.03.15

 先日、親しくしているご夫婦のお誘いで、那須塩原市主催の手話発表会に行ってきた。私は『手話』に特別興味を持っているわけではなく、ご夫婦が1年間市民講座に通い、成果発表するということでお付き合いしたのである。
このご夫婦は獣医さん、耳の不自由な飼い主がおり、コミュニケーションをとるために手話の勉強を始めた。顧客満足のため素晴らしい心意気である。
手話市民講座について少し説明すると、那須塩原市主催、月2回、無料で受講でき、20名程度の健常者が学んでおり、1年間の集大成で、5分間手話スピーチする発表会がある。東日本大震災の際、耳の不自由な方々が情報収集や周りの人々と会話できず不安な思いをさせた経験から、地域に手話ができる方々を増やそうという目的で始まったようである。

 会場である黒磯文化会館に行ってみると、200名程度の観客がおり、ほとんどが聴覚に障害を持つ聾唖(ろうあ)の方々である。耳が遠いとかではなく、全く聞こえない方々である。県北にこんなにいるのかという驚きと、会場の雰囲気がいつもと違うことに気付く。

 普通、開演前であれば、観客がおしゃべりをしてざわついたり、発表に関するアナウンスが流れるが、全く『音がない』のである。確かに観客の皆さんには音は無意味であり必要ないものである。主催者が手話を交えて祝辞から始まったが、手話で説明するためゆっくりゆっくり、できるだけ簡単な言葉で話す。20分かけて祝辞が終わり、それから1人5分間20人の手話スピーチを聞くことになるわけである。「私の夢」というテーマでスピーチ。ゆっくり、間違えながら5分間、体全体を使った手話で観客に伝えなくてはならない。

 伝えたい思いが強くなればなるほど、声が大きくなるが、聾唖者の観客には伝わらない。スピーチが終わる5分後には発表者は汗ビッショリ。見ている私もだんだん力が入ってきてガンバレ!うまく伝わってるかハラハラしながら発表終了。見ているだけなのに、ドッと疲れた発表会になってしまった。

 今回の体験で色々なことが見えてくる。聾唖者が多いこと、奇特な考えのご夫婦、自治体の取り組み、そして『話せる』『聞こえる』という大切さ。
五感(ごかん)とは、動物やヒトが外界を感知するための感覚機能、すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚をさす。普段私たちは当たり前に五感を使い生きている。しかしフル活用しているか。家族との会話、部下への指示、上司への相談、そしてお客様とのコミュニケーション、もっともっとできるはずである。
昔から『話せばわかる』という言葉がある。メールや電話も使いようだが、膝を突き合わせて、目をみて相手の話を聞き、自分の考えを話す。改めて
心がけていきたい。

リスクヘッジ

2014.07.15

リスクヘッジ

リスクヘッジとは『危機を回避する手段』という意、最近のビジネスシーンではよく使う言葉になっている。アイ電子でも納期が間に合わないから土曜日休出するとか、部品の品質が心配なので2社購買にするとか、急な受注増に備えて在庫しておくとか、みんなリスクヘッジである。営業トークでよくやるのは弊社の技術は他にはない・・・、試作から量産まで・・・低コスト云々。ウチの特長、メリットばかりを主張している。ウチしかない技術がお客様にピッタリマッチすればお互いハッピーだが、大体がウチでなくてもできることが往々にしてある。今のお客様はメリットよりもリスクヘッジを優先に考える。コストは安いが品質にバラツキはないか、営業マンは滑舌だが技術力がある会社かなどなど。

 ひとつの事例を紹介しよう。福島にあるV社(仮称)は、太陽光発電に使用するトランスを製造している会社である。近々太陽光発電が活況で増産傾向であるが、海外競合他社が台頭し、原価低減を余儀なくされている。V社は海外生産により窮地を乗り切ろうとベトナムDAIKUに白羽の矢が立ったのである。当初はDAIKUへの入居あっせんということで当社の特長をPRしていたが、どうもかみ合わない。話を聞いていくと、進出したいがベトナムのことがわからない、駐在する人がいない、法律がわからない、失敗したらどうするの。心配事(リスク)ばかりである。そこから当社が現地で生産受託するEMS提案に切り替えたところ一転、V社からみれば人、法律、撤退など大体のリスクがヘッジ(回避)できるのである。

つまるところ、V社はベトナムであろうが中国であろうが生産拠点はどこでもよい、自社リスクがヘッジできて、品質コスト納期が整ったモノができればよいのである。そしてV社が次に出した言葉はベトナム市場でモノを売りたい。待ってましたとばかりに当社の地の利、ネットワークを通じて拡販をお手伝いしましょうと。海外事業準備室の佐々木氏をベトナムに常駐させたのも市場開拓とサプライチェーン構築のためである。重要なことは相手の話をよく聞き、リスクをヘッジすること、そして最大限当社の得意技をPRしビジネスチャンスを広げることである。

 『海外EMS事業』についてはベトナムそしてもったいない工場があるフィリピンでも展開が可能であり当社の武器になる。『海外進出0円システム』(名前がイマイチだが)と命名し、これからの当社の1つの柱にしていきたいと思う。
そして少しずつ海外勤務者も増やしていく必要もあるし、海外生産のスキルも身につけなくてはならない。いよいよ当社におけるグローバル生産の幕開けである。
 最後にリスクヘッジをしながら挑戦する気持ちを忘れないでほしい。中途半端なリスクヘッジは逃げ道を作るだけで、本来やるべきことを怠り、チャレンジする気持ちさえなくす危険性もある。薩摩の訓え(おしえ)~男の順番ということばがある。
一、何かに挑戦し、成功した者
二、何かに挑戦し、失敗した者
三、自ら挑戦しなかったが、挑戦した人  の手助けをした者
四、何もしなかった者
五、何もせずに批判だけしていた者

 成功の反対は失敗ではない。挑戦するか、挑戦しないかが問題であり、成功不成功は結果でしかない。肝に銘じていこう。




懐に入った意思疎通を

2012.08.09

懐に入った意思疎通を

最近、コミュニケーション(意思疎通)の取り方に疑問を感じることがある。

新聞、ニュースを見ても、人間関係のもつれで出社拒否、上司からのイジメで訴えるなど、少し前には考えられないような事例が増えている。
会社としても出社拒否や訴訟ともなると大事(おおごと)なので「もっと部下を大切に扱うように」と教育指導する。上司からすると、最近の若いやつは何を考えているかわからない、と次第に距離が離れていく。
挙句の果てには、隣の席にいるにも関わらず、電子メールにて指示し、回答もメールという始末。
そこには会話がないのである。

昔話はしたくないが、私が入社した当時は、「怖い上司」からたくさんのお説教を受けたことを思い出すが、一度たりとも恨んだり、訴えるなど考えたことはない。
それは、お説教のあとにかならず膝を突き合わせて真剣に話を聞いてくれ、ときには酒を傾けて「心のケア」をしてくれたからである。

今の時代、経営者そして管理職は、従業員や部下と真剣に向き合っているのか。
もっと遠慮せずに部下の懐に入って「お節介」を焼くべきである。

ときには討論になり、お互い傷つくかもしれない、それでもよいではないか。
怒ったり、笑ったりの会話がない職場よりマシである。

デジタル化社会になり確かに便利になったが、デジタルでは人の心や情熱みたいなものは伝えられない。便利でクールな時代だからこそ、不器用であるが人情味のあるアナログ人間が必要なのである。

ウチの会社の従業員は「アナログ」が多いせいか、今日も大声を張り上げ、やりあっている。

こんな会社が私は大好きであり自慢である。

将来、100人、1000人規模の会社になっても「お節介」を焼いていきたい。


業界の常識は非常識

2012.08.08

業界の常識は非常識

最近、製造業の取引環境がずいぶん変わってきた。

分りやすく言うと「価格破壊」である。

この不況の中、お客様からは大幅な値引き要求、極端な例では半値という場合もある。今までは全く無茶なお話であるが、仕入先に無理を承知で値引交渉をしてみると、「仕事を頂けるだけありがたい」と間髪いれず承諾してくれる。お陰でお客様の要求を満足することができた。

しかしどう考えても半値で出来るはずがない。おかしいのである。
不安と疑いの念を持ちながら、仕入先の加工メーカーに足を運んでみると、材料仕入先変更、設備の改造やパートタイマーの活用など、きっちりと「コストダウン」を図り、「半値」でも利益の出せる体質に変わっていたのである。
この加工メーカーは「半値」要求を真摯に受け止め、冷静に改善を図り、利益確保と顧客満足を実現したのである。
お見事である。

おかしいのは私のほうである。既成概念や常識にとらわれ、「無理だ、できるわけがない」と初めから決めてかかっていた。私の持っている常識はこの会社では非常識なのである。
不況を理由に、基本的な企業努力を見失っている自分に気づいたのである。

他社を見ても、仕事がない、儲からないという声ばかり。
それを聞いて仕事がないのは周りも一緒と、安心している経営者。
そろそろ「不景気だ、大変だ」という挨拶はやめよう。
そしてこれからの時代に通用しない常識は捨てよう。

今は我々の実力を試されている時なのである。

時代に応じた柔軟性を持ち、100年に1度の大チャンスと捉え、前に進んでいこう。

いよいよ我々中小企業の出番、本領発揮する時である。



顧客満足

2012.08.07

顧客満足

「顧客満足」。

わかり易い言葉だが、なかなか奥が深く、難しいテーマである。

さて、「顧客満足とは何だろう」。当社の社是は「顧客不満足度ゼロ」である。

従業員には、お客様を満足させるなんておこがましい、不満を与えないことに注力せよと。約束を守ること、お客様の希望に出来る限り応えること、そして感謝の気持ちを忘れないこと、当たり前のことを実行することを重んじている。

しかし、私も従業員も人間、こんな当たり前のことですら、ちょっとした油断や驕りにより、見落としてしまうことがある。日々反省の繰り返しである。

一方では、東京ディズニーリゾートの事例でこんな話がある。子供を亡くした夫婦が毎年子供の誕生日に、大好きだったディズニーランド来るという。
いつもの園内レストランで夫婦2人で食事をしていると、アルバイト従業員が、子供用のイスをそっと持ってきて、「3人でどうぞ」と。
なんとも粋であり、この夫婦は満足どころか、感動すら覚えている。そしてまた来年もここに来るだろう。注目すべきは、アルバイト従業員である。

上司から指示されるわけでなく、自ら状況を判断し、サービスを提供する、アルバイトにそうさせた「社員教育」、「企業風土」の賜物であろう。
想像するに、このアルバイトはイキイキと仕事をし、自信をもってお客様対応をしており、そして仕事を与えてくれた企業に感謝すらしている。
まさに「従業員満足」ができていると言えるだろう。

この時代、多くの企業が、大切な戦力であり仲間である従業員を蔑ろにしていないか。今のリストラや派遣切りは最たるものであり、不況の時期にこそ、もう一度、基本を見直すべきである。

「従業員満足」ができれば「顧客満足」の答えが見つかるだろう。